山田有浩 / Arihiro Yamada

Information of Arihiro Yamada (dance, butoh / ダンス, 舞踏)

10月(文字)。






10月。


神さまが居ない。
ただ音だけが鳴っている。
風に草葉がうまれでて、しづかに雨がたちのぼり、
世界がささめきはじめたのは、
何世紀も昔から流れ着いた影の足のたて音、。
幽暗の中からあらわれる、からっぽの器の中央に
月と記すたびそこに月がうまれることを、
忘れてしまった私たちは、
振動する虚空の躯の響きに映る灯に触れて、
立ち籠めた芳香の色に立ち尽くす、。
崩れおちる水溜まりの柱を布石として、
どこか遠くより歩いてきた人たちとすれちがった。
てのひらの宙を飛んでゆく渡り鳥の温度を微かに感じた時、
消えてゆくまで見送ったあとにまた遇いましょう、、。
水浸しになった能舞台の上、、、
石はそのまま置かれている、、、。
かつてタマシイを別けゆく人の影があった、。
碧白き麻の衣に身を包んだ蔑れし異族の生き残り、
乞うて詠い、舞い、奏でる、大気のためと云って、
治療をつづける人のおとづれを、

鐘の音を聴いた。
持って行かれてしまった耳を、。
 は、やってきた、。
接近してゆく、。
この耳を視ている眼は誰のものか、。
(じめんをウラガエセば透視眼が……、)、、。
耳を呼ぶための、聲……、。
聲を視るための、耳……、肌……、、。
吹いてくる風に隠れた人……、揺らす聲、……、。
まさかこんな眼に遭うとは思わなかったモノたちが、
カタカタカタカタカタカタカタカタ…………、、、
ガタガタガタガタバサバサバサバサ…………、、、
ととととととととととととととととととととととととととととと…………、、、、
と、。