山田有浩 / Arihiro Yamada

Information of Arihiro Yamada (dance, butoh / ダンス, 舞踏)

伊予神楽@宇和島市長堀 三島神社

ライフワーク的に全国の神楽を観て回っている。

4月14日、伊予神楽を観るため、愛媛県宇和島市長堀 三島神社を訪れた。covid-19の影響で、お客さんを入れての奉納は四年振りとのこと。

四国の舞いを観るのは初めて。春に行われる神楽というのも珍しい気がする。

 

神楽なので、むろん天孫降臨等の神話を題材にした舞いは多いものの、「物語る」というよりも、舞いによって呪術的な空間をつくり出していくような色合いが濃い印象。

神職しか舞ってはいけないということ、一見して素面の舞いが多いようなことから、世俗性よりも神事としての側面が強い、と言った方がいいのかもしれないが。

自転・公転の旋回と、一度ドンと踏み鳴らす動きが特徴的で、いずれの舞いにもこの動作が反復的、応用的に見られることが多い。

 

もともとは35演目を夜を徹して行っていたそうだが、現在残る舞いは10数演目とのこと。

途中、場内を一挙に笑いで温めるような演目(子供が鬼と相撲をとる)が挿入される一幕もあるが、世俗性のあるものはそれくらいで、場が深まるに連れ、どんどん表層的な演出は削がれてゆくように見えた。

松明の炎を持って激しく旋回する舞いはとりわけ印象に残る。最後には素手で火を消して終わる。

また、真剣を旋回させる一人舞いの迫力と緊張感。

この辺りの舞い、かつて夜神楽を行なっていた頃には、丑三つ時も回ってお客も完全に酒が回りきってうつらうつらするような時間帯に行われていたのだと思われる(宮崎に残る夜神楽を見ていると、やはりこうした夢幻的な時間帯に最も鋭く危険な舞いが厳粛に舞われている)。

 

神社は完全に「地元の祭り」といった風情で、ほとんど小中学生とちびっ子とその保護者、そこに高齢者がチラホラという程度。外部からわざわざ観に訪れるような物好きはほぼいないに等しく(「神楽マニア」やカメラ愛好家すら…)、子どもたちも鬼相撲から最後の餅まきの間しか神楽を観に上がって来ないのが、いささか勿体ない。

しかし古く厳かなかたちが残っていて、わざわざ関東から観に行けてよかった。

 

それにしても、宇和島という、縄文や黒潮や大和からの文化が混淆し合う不思議で豊かな土地も魅力的だ。海鮮も安くてめっぽう旨い。また訪れたくなる土地だ。

 

【拝見できた舞い】

・式三番

・喜余女手草舞

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・古今老神舞

・身躰鈿女舞

・悪魔払舞

・大蛇舞(鬼之舞)

・弓之舞

・火焼舞

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・妙剣舞

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