山田有浩 / Arihiro Yamada

Information of Arihiro Yamada (dance, butoh / ダンス, 舞踏)

05月29日 日曜日、雨。







曇り雨の日は山がひとつも見えません、白く巨大な霧の塊々が遠い山々の森林の狭間からもくもくもくもくと立ち込めてきてどこまでも境界なき揺らぎの膜で転がり包み込んでゆく巨大な壁、とおくてよくみえない、世界は白白白白白に緑深緑の白、白、白、白、白、、、
雨降りつづく北軽井沢の森の廃墟の前で全裸で二時間程蠢く、稽古でもなく踊り「のようなもの」でしかなかったかもしれない、とりあえず動きはじめれば雨の冷たさが肌に触り伝ってゆく、空にゆらぎながら伸びてゆく、昇ってゆく水、水、の記憶、匂い、土の匂い、草の、葉の、木の、肌の匂い、牛の糞の匂い、忘れ去られたものたちの匂い、、、触れてくる風、空気の揺れや動きや僅かな温度感、湿り気の変化などの機微を肌にひしひしと感じ受けながら、動きは様々なところへ伸びてゆく、声がからだから洩れ谺してゆく、
からだがひとつあれば境界が発生するにはじゅうぶんだ、世界はすべて「いないないばぁ」だ、


bbcのレディオの電波が入らなくなり残念です、ブルーハーブとフューさんとオーネットとバッハのカンタータを聴く、ブルーハーブのことばの力、これはやっぱ尋常じゃなく、強度、想い、こころ、音の、響きの、奥に眠るもの、反復、速度、二度打ちや多重打ち、身体的シンコペーション、連音同音疑似音、陀羅尼、真言、、、と、どんどん連想されてゆく、、、雨ニモ負ケズ、、、

nhkルドン特集にて田中泯松坂慶子武満徹の声質の感触に耳を開かされる、言葉の輪郭のもう一歩向こうに広がる豊かな質感を孕んだ声音が心の深部に柔らかく穏やかかつ幽玄的な空気すら携えて届いてきて包まれるような感触、吉増さんや島尾ミホさんの声にもあるような、
ルドンの描く眼球は見えぬものを見るための世の謎を泳いでゆく迷宮の原始の眼球だ、閉じられた眼はより深く世界を感受し自らの感性を開いてゆく為が故だ、ルドンの色彩が分かり易いとは思わないと鋭く柔らかに切り込む泯さんのことばにビリビリとなんども頷く、目に見えず立ち込めている色や匂いや音やスピリットを見つめそれをカンバスに表象していったのがルドンのパステルの色彩なわけでしょ、云ってみればモノクローム作品の頃からルドンの画の中には色彩が溢れていた、微細なミクロの宇宙がざわめきささめき合いながら動き回っていた、花の画の華やかさを包み込むようにひそやかに満ちている鮮やかでカラッとしたペーソスや奥ゆかしさ、の中に弱き者としてのルドン自身や自らをも見ているような泯氏に、あぁ怯臆や敗北や絶望を知るものの優しさよ、となった……、、、。